■歯科審美にScience と Art を
我々がアントニオ・ガウディやフランク・ロイド・ライトの建築の魅力的な造形美に誘われ、導かれるのは専門家の言を借りれば、両者とも首尾一貫して内部構造の論理性が外部に投影されており構造と形の一体化によるものとされています。また、芸術の世界においても、ミケランジェロは生涯のうち100体に近い死体を解剖して筋肉や骨格の全てを覚えたと言われております。レオナルドもこれに劣らなかったことは周知するところですが、人体解剖とその機能を知ることはルネッサンスの美術家にとって欠かすことのできない大切な教課の1つであったようです。歯科の最終目的はEsthetics(エステティック)にあると言われていますが、歯科での審美性が美容外科と異なるのは外観美のみならず機能を重視する点にあります。つまり外観美を求められる前歯部に限定された補綴(入れ歯)治療においても、臼歯部咬合(奥歯の噛み合せ)の安定を前提に進めるべきであり補綴(治療)された修復物の咬合は顎関節や咀嚼筋群と生理的な調和がなされていることが重要です。この原則を無視した修復物は破損を招くのみならず、時には顎機能障害(顎の関節障害)を惹起する事は日常の臨床において多く遭遇するところです。以上の観点から、歯科における審美性とは機能美であり顎口腔系の生理的機能との調和がとれている事が条件であると思います。構造を主体にした形に完全に調和させたガウディやライトの建造物やルネッサンス時代の造形美のように、審美歯科はphonetic を含めた顎口腔系のfunctionに基盤をすえてこそ、最終的にはDentistry is Science & Artになりえるものと確信いたします。