■Minimal Interventionは時代の要請
歯科臨床において、硬組織を削去する手段としての回転式切削器具の効率性は誰しも認めると ころである。しかし、このような切削方式に疑問を抱きながら、日々に診療を行っている歯科医師も 多いことと推測する。回転切削方式が発生する振動、熱、騒音、疼痛、臭気等が不快であることは、患者のみならず歯科医師も気づいていることであり、患者が 処置を嫌う要因ともなっている。  また、欧米においては歯科医療施設における院内感染や医原性疾患が社会問題となり、切削器具をエアータービンから高性能マイクロモーターに転換している 状況でもある。そして、エアータービンによる歯牙切削時の硬組織および歯髄に及ぼす為害性に関する研究から、切削の方式を見なおす歯科医師も増えつつある 傾向にある。このような状況の変化を支える環境として、歯科材料のうち接着性レジンの開発進歩が歯牙の切削を最少にする術式を可能とするようになった。 また、不幸にして歯牙を切削される状況に至った患者が、歯の機能の回復は勿論、自分の歯の色を再現し形態を回復してくれる必要最小限の歯質削除による修復 措置(Minimum Invasion Dentistry,Minimal Intervention)を期待する大きいうねりが生じてもいる。このような状況を体感しつつ、また歴史的な流れを踏まえ、筆者は1990年から米国から購入し、エアーアブレージョンを利用した臨床を行ってきた。当初を振り返ると、適応症例や切削の方法が十分には説明されず、試行錯誤にて操作方法を体得 し、その原理を理解し、現在に至った。