■痛みの発生機序とレーザーの広用

まず予備知識として「痛みの発生機序と痛みの悪循環」についてまとめると、痛みのメカニズムについてはいまだ解明されていない点が多いが、ひとつの考え方として表1 のような諸要素がかかわりあって症状としての痛みが生じると考えられている。はじめに、炎症や外傷などの何らかの痛みの原因となるものが知覚神経の末端を刺激して、 それが、脊髄に伝わり、さらに脳に伝達されて。刺激が「痛み」として自覚される。また、自覚された痛み刺激は運動神経および交感神経の興奮を惹起し、痛みの生じている 部位を中心に筋の緊張、血管の収縮をもたらす、これらは痛みを生じている部位を乏血を促し、組織の酸素欠乏そして発痛物質の生成と滞留を促進し、さらにその発痛物質が 知覚神経の末端を刺激するという痛みの悪循環を形成し、末梢神経に刺激をくりかえし与えると誘発されるスパイク数が次第に増加していく「ワインドアップ現象」を引き起こす。 レーザーによる生体刺激は、血流改善や血管新生の促進、組織酵素、細胞分裂の活性化亢進、コラーゲン新生の亢進、生体活性物質産生の亢進、免疫能の向上、神経興奮性の 抑制などに関与し、疼痛緩解効果をはじめ抗炎症効果、創傷治癒促進効果などがあると考えられている。 なお、レーザーによる疼痛緩解効果についてはいまだに不明な点が多いが、その作用が生体を正常な状態に戻すよう働きかけ、痛みを緩和すると考えられている。レーザー による疼痛緩解メカニズムの解明は、高齢社会のなかで痛みを訴える患者が増加している点からも、大いに期待されている。 レーザーのもつ生体への作用が疼痛緩解メカニズムとも関連が深いと思われるのでその作用機序をまとめてみた。

1.筋の弛緩、血管の拡張、血流の改善
痛み刺激によって生じる筋の緊張、血管の収縮をそれぞれ正常な状態に向かわせ、局所の乏血を改善する効果がある。
2.発痛物質の代謝促進
痛みによって生体内に産生される発痛物質の代謝を促進し、痛みの悪循環を断つ効果がある。
3.生体活性物質産生の促進
鎮痛作用をもつ麻薬様物質の産生を促進すると考えられており、このことはレーザー照射による疼痛緩解作用が、麻薬様物質の拮抗薬であるナロキソン により抑制されることで示唆されている。
4.神経興奮性の抑制
痛みは、刺激によって生じる神経の興奮によって伝達される、レーザーは、この神経の興奮を抑制する効果があると考えられている