■レーザー麻酔の実際
「レーザー麻酔」という表現が学問的に確立されていない今日、安易に「レーザー麻酔」という用語を使用していいのか疑問に思うところだが、歯牙および軟組織に レーザーを照射し、麻酔効果が得られた状態を仮の表現として「レーザー麻酔」とする。 日常の臨床を通してレーザー麻酔に対する筆者の所感は、その特性を利用して疼痛の軽減、あるいは抑制、無痛化に利用するもので、その奏効状態は注射麻酔薬のように 神経系を遮断する神経ブロックとは異なる。 レーザー麻酔は歯髄の震盪(Concussion of the dental pulp)法やレーザーの効果因子に基づく、痛覚伝導路の抑制などにより生体の痛覚闞値の上昇、疼痛反応の変化に起因
するものと思われ、麻酔薬のように局部が完全に麻痺した状態にはならない、そのため、まったくの無痛状態で治療を行うには麻酔薬を使用するほかはないが、患者にとって は感覚をもちながら我慢できる範囲で治療を受けられ、麻酔薬による術後の不快感がないなどの利点を考慮するなら、症例によっては十分に臨床に応用できる術式である。 実際当院で25年からは歯冠形成の大半にレーザー麻酔を活用しているが、必ずしも全症例に効果をもたらすものではない。そのため、まったく無効の場合には照射方法が適切 であるのか、適応症例であるかを再度確認したうえで、明らかに無効と判断したときには漫然とした照射は中止し、他の麻酔法に切り換えている。
当院でレーザーによる麻酔法をはじめて伝授されたのは昭和大学歯学部第1保存学講座の松本光吉教授からで、その後もレーザー治療に関していろいろとご教示いただいており この場を借りてお礼申し上げたい。